SUMMARY
- 各ソフトの役割を明確にすることで、企業のニーズに沿った連携システムができる
- 機密情報はAlfrescoで管理、拠点との情報共有にはLiferayをポータルサイトとして活用
- システム連携とは、システムの導入が、そのままソリューションとなる仕組みである
オープンソースECM(コンテンツ管理システム)で世界でいちばん売れている Alfresco(アルフレスコ) と、オープンソースポータルとして世界市場シェア1位を誇るLiferay (ライフレイ) を連携させると、システムが進化します。AlfrescoとLiferayのシステム連携事例をご紹介します。
システム連携のポイントは、各システムの役割を明確にすること
オープンソースECMのAlfrescoとオープンソースポータル Liferayは、それぞれの個性を持ちながらも、類似した機能が備わっています。ふたつのシステムを連携させることで、企業のニーズにより則したシステムを構築することができます。
AlfrescoとLiferay連携の実際についてご紹介する前に、まずは、システム連携のポイントについてご紹介します。
システムを連携する場合は、各システムの役割を明確にして役割分担を決めることが大切です。
実際の業務では、ひとりの担当者が、複数のプロジェクトを掛け持ちすることになります。そのときに、プロジェクトごとに違うシステムを使っていると混乱します。ユーザビリティを考えれば、ひとつのシステムで全ての機能を実現できれば理想的です。
ひとつのシステムで全ての機能を実現できない場合には、複数のシステムの組み合わせで実現することになりますが、この組み合わせのパターンを、全てのプロジェクトで標準化することが重要です。
たとえばフロントエンドにはLiferayを据えてソーシャル機能を担当させ、バックエンドではAlfrescoがコンテンツ管理とワークフローを担うというように、あらかじめ役割を決めておけば運用もスムーズですし、プロジェクトが変わっても悩むことはありません。
連携方法は、利用シーンを想定して考える
LiferayとAlfrescoの連携、その手法は主に3種類考えられます。ただし連携システムをどのように利用するかによって、連携方法も変わってくるかと思います。連携方法についても、どのような業務シーンで何に必要なのかという使用シーンをあらかじめ想定することが必要です。
(1) LiferayのポートレットにAlfrescoを組込む
連携システムを高性能ファイルサーバーとして使う場合には、LiferayのポートレットにAlfrescoを直接組み込む方法が向いています。
Liferayにはポートレットというページを構成するような部品機能があり、このポートレット部分に、Alfrescoを直接組み込みます。Alfrescoが提供しているWebサービスのAPI、OpenSocialという技術を使えば、非常に簡単に組み込むことができます。
(2)Liferayのポートレットに独自アプリケーションを組み込み、Alfrescoと連携する
Liferayのポートレットに、独自開発したアプリケーションを組み込みます。独自アプリケーション内では、Alfrescoが提供しているAPIでAlfrescoと連携させます。
Liferayのポートレットに組み込むところまでは同じ工程ですが、組み込むものをAlfrescoではなく、独自のアプリケーションにしているところがポイントです。アプリケーションの開発言語としては、Java PHP、Rubyなどが使えます。
(3) LiferayのポートレットにAlfresco のアドオンを利用して連携する
LiferayのポートレットとAlfrescoのアドオン「Alfresco Portlet For Liferay Portal」を連携させる方法です。
ポートレットのなかにAlfrescoのフォルダが出てくるようなイメージです。こちらも、簡単に連携ができます。ただし残念ながら、最新バージョンでの確認がとれていないため、実際に使う場合には確認が必要です。
LiferayとAlfrescoの連携システムで資産をセキュアに管理する電子機器メーカー事例
最後に、電子機器メーカーA社様の実際の連携事例をご紹介します。
電子機器メーカーA社様は、グループ企業を含めて4,000名の従業員を抱えるエンタープライズ企業です。海外にある12拠点と、PDFファイルの図面データを日常的にやりとりしています。この図面データは、A社様の根幹をなす、資産ともいえる機密情報とのことでした。
連携システムを導入する前はAccessで図面データを管理しており、次のような課題を抱えていました。
- 海外拠点とのデータ共有がメールベースのため、煩雑になる
- データ登録や変更、削除など文書の証跡が残せない
- ポータルのように使えるものがない
- Accessアプリの機能は移植したい
図面データの管理を中心に、ヴィセントでは次のような提案を行いました。
-企業の資産である図面データは、高性能のECM、Alfrescoで管理
Alfrescoは、個々の文書にワークフローをつけることができるため、文書を基点としたワークフローが働き海外拠点との煩雑なメールのやりとりがなくなった。またAlfrescoのバージョン管理で、文書の証跡が残せるようになった。
-ポータルサイトとしてLiferayを構築
海外での情報共有に、Liferayのポータルサイトを活用。Accessの過去データは、Javaアプリとして Liferayへ組込んだ。
-図面データをリアルタイムにバックアップ
図面データの全体をイメージ化して保存し、リアルタイムでバックアップできる仕組みとしてAcronis(アクロニス)を導入した。
連携システム導入後、図面データをAlfrescoでセキュアに管理する一方、文書ベースでワークフローを回せるようになったことで、業務全体がスリム化しました。また、Liferayのポータルを使うことで海外とのやりとりも円滑になりました。
いちばんのポイントは、「A社様の図面データは、会社の資産である」というコンセプトです。ヴィセントでは図面データのバックアップにも注力し、リアルタイムでパックアップできる仕組みを構築しました。
AlfrescoとLiferay、それぞれのシステムの長所を活かすと、企業が抱える個別のニーズに、よりフィットしたシステムへと進化します。
システム連携のメリットとは、A社様のようなきめ細かいニーズに応えることができるところにあります。システムの導入が、そのままソリューションとなる仕組みなのです。